まったりとした時間 [院の中の愉快な面々]
外はまだ寒いのでしょうね。
ここに入って5日目
ずっと25度に保たれた空間の中にいます。
トイレまで5秒、TVはベッドのすぐ近く(ほとんど見ませんが)
新聞は読み放題(これも眺める程度)
たまに責苦を味わいますが、想定の範囲内。
昨日はこの1と月私を苦しめてきた咳の原因になっている胸水を1リットル
抜いてもらい大分楽になりました。
あまりお腹が空かないのですが、カロリーを取った方がいいとの
安道全先生のお言葉に従い、おかみさんが毎日買ってくれるハーゲンダッツのアイスを楽しみにしています。
イチゴ [院の中の愉快な面々]
初老の男性はきっと中小企業のオーナーなのだろう。
誰に対しても上から目線。
医師や看護師に対してもいいたい放題。
相部屋のルールを無視して廊下にまで聞こえるような大声で部下に対して行う指示、しばしば叱責。
家族にはあれもってこい、これ買って来いの我儘。
病院のご飯はほとんど食べずに奥さんに持ってこさせた物を食べる姿を見るに至っては、さすがにこれでは病状はよくなりませんよと看護師長、担当医が粘り強くいい聞かせ、渋々納得したのでありました。
数日後のことです。
巡回にきたナースを捕まえて、彼はこういうのです。
"晩、ようねられへんのや。睡眠薬くれ"
それを聞いたぽんたは心の中で叫びました。
"寝られへんのはこっちや。あんたの大きなイビキで!"
その夜、睡眠薬を飲んだ彼は消灯時間がくるとすぐに深い眠りにつき、暫くすると、普段よりなお大きなイビキを
かきはじめ、2時間ほどは大音声でおそらく誰も眠れなかったと思います。
イビキが止んて漸くぽんたも眠りについて、どれくらいたった時でしょうか。
ぽんたは再び大声で眠りを破られます。
"こら、おかん、おかん!"
"あれや、あれ持ってこい!"
いくら何でも深夜の携帯はいけません。
たしなめようと、彼のベッドに近づいたそのとき、
''イチゴや、おかん、イチゴ持ってこい!"
よほど、イチゴが食べたかったのでしょう。
彼の手に電話はなく、寝言をいっていたのです。
翌朝、彼は満面の笑みで
"昨日はよう寝られましたわ。夢なんかひとつも見んと"
窓際のベッド [院の中の愉快な面々]
今回は久し振りに窓際のベッドになりました。
実はあまり好きではないのです。
最も大きな理由はトイレから遠いこと。
特に術後は一歩でも近い方がいいのです。
ブラインドの開閉も面倒。
一方メリットはちょっと陣地が広い。そして何よりも明るく見晴らし良好であること。
ところがこれまた諸刃の剣で、この時間くらいから西日がまともに入ってきて暑くてたまらんのです。
そして日が落ちると夜は寒い。
他に着替えのとき、ブラインドを下ろさないとまる見えですが、昨日から入れ替わり立ち代わりナースに散々みられているので開き直っています。
(血管造影でカテーテルを動脈に入れたあと止血が不十分で大変可哀想な状況です)
血圧急上昇 [院の中の愉快な面々]
これも10人部屋の頃のお話です。
夏の暑い盛りに20歳代の日焼けした青年が入院してきました。
彼は、製薬会社の販売員をやっているいわゆるプロパー君です。
プロパー君は、会社の健康診断で血圧があまりに高いので、検査入院してきたとのこと。
血圧が高い以外は全く元気なので、隣のベッドの退院まじかの同世代の青年Aと仲良くやっておりました。
病院というところは、少なくとも一日3回、ナースが検温と血圧を測りにきてくれるのですが、彼の血圧は
入院当時、上が、200超、下が100超という異常な数値でした。
点滴怖い [院の中の愉快な面々]
さて、もう随分昔のことだったような気がします。
この国にまだバブル景気が訪れる前の、そんな昭和の時代でした。
私は、図らずも駅前の病院にとても長い間入院していました。
病室は3階混合病棟の一番つきあたりの10人部屋。
この混合病棟は主に小児科の病室と、エレベーター横の4人部屋と奥の10人部屋が大人の病室です。
病院に半年もいれば、大抵のことはわかります。
また、あの頃はプライバシーというものは全くないといっていい時代だったので、カーテンは開けっぱなし。
10時になると一斉に点滴が始まり、なぜか皆が水戸黄門を見ていました。もちろんだれもイヤホーンなど
していません。
さて、そんな病室に深夜ひとりの急患が運ばれました。
次の朝、情報収集するとどうも風邪をこじらせて高熱を発しているらしい。名前はブルージマさん。推定25歳。
彼は一日3回点滴をするのですが、点滴の間、瞬きもせず目を見開き、点滴を見続けています。